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グループ研究レポートT 雑誌グループ
雑誌から見る女性像
今井梨恵子、井上泉、清水裕恵、冨波英子
はじめに

 雑誌は一般書籍に比べ気軽に手にする機会が多く、特にファッション雑誌は私たち女子高生の必須アイテムである。そして雑誌に掲載されている服装をまねしたり、モデルのようになりたいと憧れを持つのは女性ばかりではない。その中には雑誌に掲載されている通りにしていれば、女性は男性に、男性は女性に良い印象を与えられると考える人もいる。女性ファッション誌には男性に求められる女性像、男性ファッション雑誌には女性に求められる男性像が掲載されていると思い込んでいるのである。しかし、本当にそうなのか。私たちにとって、女性が求める男性像と男性がこうありたいと願う男性像、男性が求める女性像と女性がこうありたいと願う女性像とでは違いがあるのではないか。もし違いがあるのならばどう違うのかをここで明らかにしていきたい。

 分析の対象とした雑誌はたいていの書店やコンビニエンスストアにあり、一般的によく読まれていると思われる女性ファッション雑誌『non-no』(2003年12月5日号)、『zipper』(2003年12月号)の二誌を中心にし、その他に『non-no』(2003年9月5日号)、『zipper』(2003年11月号)、『MORE』(2003年12月号)、『with』(2003年11月号)、『Can Cam』(2003年12月号)、『egg』(2003年12月号)も比較のために取り上げた。同じように男性ファッション雑誌は『Boon』(2003年12月号)、『MEN’S NON-NO』(2003年12月号)を中心とし、『GET ON!』(2003年11月号)、『MEN’S NON-NO』(2001年4月号)を取り上げた。


1 ファッション雑誌の表紙から見る『両性が求める理想像』

 まず、女性ファッション雑誌と男性ファッション雑誌の表紙を見比べて三つの違いがあることに気付いた。

  一つ目は、ハートや星のマークが印刷されているか否かである。女性ファッション雑誌『zipper』にも『Can Cam』にも小さなものではあるが星マークがあり、『non-no』にはハートマークが見られる。しかし、男性ファッション雑誌の『Boon』、『GET ON!』、 『MEN’S NON-NO』のいずれを見ても、その様なマークは見られなかった。男性ファッション雑誌には見られないマークが女性ファッション雑誌に見られるのはなぜか。人間の書くという行為には表現したい、記録したいという欲求がある。その欲求と共に、人間は自分自身や自己の分身、周囲の環境を飾りたいという欲求、つまり装飾願望を持っている。その装飾願望の表れが女性ファッション雑誌のマークだと考えられる。また、装飾願望は男女関係なく人間が持っているはずなのに、女性雑誌にしか表われないのは女性の脳と男性の脳の違いが関係しているとも考えられる。田中冨久子著の『男の脳、女の脳』によれば女性の脳と男性の脳に違いがあり、男性よりも女性の方が文字の操作能力が優れていると推測されている。男性ファッション雑誌には書かれていないマークが女性ファッション雑誌に書かれているのは文字の操作能力に優れ、記号も巧みに使って書くという女性の特徴を表しているのだろう。そして雑誌の表紙を見る人に、美しいとか、かわいいと思わせているのではないか。

 二つ目の違いは、表紙に書かれている文字の色使いである。それをまとめたものが表1である。
表1

雑誌名

表紙の誌名の文字の色

表紙の誌名以外の文字の色

女性雑誌

non-no  12月5日号

ピンク

ピンク、赤

Zipper  12月号

ピンク

ピンク

MORE  12月号

ピンク

ピンク、白、灰色

CanCam  12月号

ピンク

ピンク、白

男性雑誌

Boon  12月号

緑、少し白

GET ON! 11月号

オレンジ、黄

MEN’S NON-NO  12月号

赤、黒、白

 女性ファッション雑誌には、ピンクが多く使われている。柏木博の著作『色彩のヒント』〈色の意味空間〉ではピンクは「弱い」・「美しい」に分類されていた。ピンクは弱さや美しさを連想させる色なのだ。「弱い」とか「美しい」といったイメージがあるピンクを、目立って見える表紙の誌名の色に使っているということは、見る人に、かわいらしいイメージを抱かせるためである。

 一方、男性ファッション雑誌では、緑、黄、オレンジがよく使われているが、前掲書では、緑は、「弱い」・「美しい」で、黄色は「強いと弱いとの中間」・「美しい」、オレンジは「強い」・「美しい」、赤も「強い」・「美しい」を連想させる色だとされている。男性ファッション雑誌に使われている色が示す意味合いは女性ファッション雑誌ほど一様ではない。男性には一般的に「強い」というイメージが持たれているが、文字の色から見ると「強い」を意味するものだけではない。

  三つ目の違いは、誌名が大文字で書かれているか小文字で書かれているかである。女性ファッション雑誌の誌名を見ると、ほとんどは小文字で書かれてある。『non-no』も小文字であり、『egg』も小文字である。同様に『zipper』も『with』も小文字で題が書かれていた。『with』の編集部に「なぜ、小文字なのか?」と問い合わせてみると「デザイン上の理由で決めました。」という返事が返ってきた。大文字で書くと角張って見えるからだという。『with』という名前にしたのは、女性と男性が、共に生きていけるようにという気持ちを込めて付けたのだそうだ。その『with』と対照的に『MORE』は大文字で書かれてある。『MORE』の編集部は私たちの問い合わせに対し「『MORE』は強力なキャリア志向、男性に負けない強い女性になって欲しいと気持ちを込めて『MORE』と大文字にした」と答えてくれた。

 これらから、穏やかな気持ちを表すためには小文字、力強さを表すには大文字を使うのが適当だという考えがわかる。女性がこんな格好をしたいと憧れ、こんな風になりたいメイクやファッションのお手本とするための最も身近で手軽な雑誌の誌名が小文字で書かれており、しかも、その小文字が丸っこく、かくばっていない、かわいらしく優しい文字であることは、女性がこうした印象を与えたいと思っていることを示していると言えるだろう。


2   ファッション雑誌の写真から見る『両性が求める理想像』

  次に雑誌に掲載された写真の中の一人一人のモデルの「立ち方」に注目してみた。するとおもしろいことがわかった。女性雑誌『zipper』(11月号)で女性の全身写真164枚中78枚が「内股」で写っていたのだ。(資料1)女性雑誌『non-no』(9月5日号)でも、女性の全身写真187枚中60枚が「内股」だった。しかし、男性雑誌『Boon』(12月号)では、男性の全身写真132枚中128枚が「外股」で、この雑誌に出てくる女性の全身写真2枚中二枚ともが「外股」で写っていた。『MEN`S NON-NO』(4月号)でも男性の全身写真168枚中143枚が「外股」で、この雑誌に出てくる女性の全身写真3枚中3枚ともが「外股」で写っていた。『GET ON!』(11月号)でも女性の全身写真12枚中9枚が「外股」で写っていた。(資料2)

  この結果からわかるように、女性雑誌では女性が「内股」で写っている写真が半数を占めるのに対して、男性雑誌に出てくる女性は、「外股」で写っているものが多い。つまり男性が求める女性像と、女性がこうありたいと思う女性像に食い違いが起こっているのである。このような違いは、昔と今との理想的な女性像の違いや変化から生まれてくるのではないだろうか。

 昔の女性は、働く男性を陰で支える女とされていて、表に出る存在ではなかった。しかし今では女性が男性と同じ仕事をし、同じように稼ぐ時代になった。女性は昔のように、かわいらしくけなげでおとなしく男性に従っていくのではなく、自分なりの考えや判断力を持ち、しっかりと自立し、たくましく生きていくことが求められつつある。そうした理想像の変化は女性に限らず男性にも言えることである。
資料1

資料2



3 男性、女性ファッション雑誌の特集記事から見る『両性が求める理想像』

 次にファッション雑誌、女性雑誌2誌と男性雑誌2誌の特集記事について比較した結果が表2である。文字の色と写真の載せ方について気づいた事は、男性雑誌よりも女性雑誌の方がカラフルだということと、女性雑誌の方が元気な印象を与えるということである。また、写真が規則正しく並べてあるページと不規則に並べてあるページを比べてみると、不規則なページは遊び心があってかわいい感じがするが、規則正しいページはシンプルで落ち着いてすましているという印象を受ける。

 文字や写真の並べ方がそのまま雑誌が求めている男性像、女性像となっているのではないか。男性読者は男性に対しあくまでもシンプルで、落ち着いている男性を理想とし、女性読者は女性に対し、遊び心があり元気でいつもキャピキャピした感じの女性を理想としているのだと考えられる。

表2

雑誌名

女性雑誌

男性雑誌

non-no

zipper

MEN`S NON-NO

Boon

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文字の色

オレンジ

三色の組み合わせ(黄・緑・白)

黄・黒

黒・白・赤・青・オレンジ・黄

渋い緑・オレンジ・黒・白・青

黒・白・赤・緑

黄・黒・白

写真の
載せ方

無造作にかさねられている。大きさも様々

無造作にかさねられている。大きさも様々

桝目状で規則正しい

桝目状で規則正しい



4 マスコミが与える『両性が求める理想像』への影響

  これまでの分析から、女性ファッション雑誌における女性像は古いタイプの女性、いわゆる昔の女らしさを持っている女性であり、男性ファッション雑誌における女性像は、むしろ現代的なタイプの女性、男性に負けない強さを持つ女性であると言えそうである。

 こうした違いが男女別のファッション雑誌特有のものなのか、それとも現代社会の特徴なのかを確かめるため、男女どちらともが観るテレビドラマのストーリーで男性が求める女性像がどのように表現されているのか調べてみた。

 最近のドラマ中の男性主人公は、たいてい気が強く芯がある女性が好きである。1998年1月12日からFNS系で放送された「DAYS」では、とても女性らしくて男性を頼りにする女性と、仕事がバリバリできて芯の強い女性が登場する。主人公の男性はその二人の間で揺れ動くが、結果的に男性主人公が選んだのは芯の強い女性である。自分につくすタイプの女性よりも、1人で自立した女性を選んだのである。このドラマの中の男性主人公も男性ファッション雑誌と同じように新しいタイプの女性を求めていることがわかる。 

 また男女問わず読まれているテレビ雑誌『テレパルf』(2004年1月号)では、「女のキレイはTVで磨け」というタイトルで女性に関する特集を組んだ。そこでは髪型や服装など、様々なドラマの女性主人公のおしゃれについて掲載されていた。彼女たちは役柄にあった様々なおしゃれをして読者を魅了する。一方、別のテレビ雑誌で組まれていた男性に関する特集記事は「頼れる男性主人公ベスト3」や「友達になりたい男性主人公ベスト3」など、内面や性格を重視した記事がほとんどである。

 これらの雑誌の記事から、内面や性格を重視した男性像に対して、外見のキレイさを重視した女性像が示されていることがわかる。


まとめ

  これまでのことから男女どちらも見るテレビドラマ、テレビ雑誌や男性ファッション雑誌と女性ファッション雑誌での女性像は違い、二つのタイプの女性像が並存していることが分かった。では、なぜ古いタイプの女性像が残り続けているのだろうか。

  今では女性が社会進出してきているが、社会を構成している組織のトップは男性が多い。例えばインターネットでテレビ局のプロデューサーを調べると、2003年10月から始まった9時〜10時代に民間4局(NTV・FNS・テレビ朝日・TBS)で放送されていた連続ドラマ13本中、男性プロデューサーは12本にも及ぶ。女性が社会進出をする一方、男性は依然として社会のトップに立ち続け、男性社会を固持しているといえよう。こうしたマスコミの組織の中にあるダブルスタンダードが、雑誌やドラマ作品の女性像にも反映しているのではないだろうか。

「女性らしさ」、「男性らしさ」というものは虚像でしかない。「らしさ」というものはある一定の人にとっては有益であるかもしれないが、「らしさ」に縛られた姿は自分の本当の姿ではない。誰かに求められるからといって虚像に振り回されるのではなく、自分の意志で自分のあり方を考えるべきである。そのことに気付かない限り、女性は男性と同等に扱われることはない。虚像に振り回されず、つくられた「らしく」精神から脱出することが大切である。両性が自分の実像を創ることができる社会にしていくことこそが、本当の意味での男女平等への一歩なのである。


主要参考資料
Boon             2003年12月号(祥伝社)
GETON!         2003年11月号(学習研究社)
MEN’S NON-NO   2001年4月号 (集英社)
MEN’S NON-NO   2003年12月号(集英社)
non-no           2003年9月5日号(集英社)
non-no           2003年2月5日号(集英社)
zipper            2003年11月号(祥伝社)
zipper            2003年12月号(祥伝社)
MORE            2003年12月号(集英社)
with              2003年12月号(集英社)
Can Cam          2003年12月号(光文社)
egg               2003年12月号(太陽図書)
テレパルf           2004年1月号
主要参考文献
『色彩のヒント』  柏木博/平凡社
『色彩の心理学』  金子隆芳/岩波書店
『形の美とは何か』  三井秀樹/日本放送出版協会
『女の脳、男の脳』  田中冨久子/日本放送出版協会


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