「はじめに」より抜粋
短歌にしてもフラメンコにしても「目に見えない魂のようなものに形を与えたい」と
いう思いが、私の表現の根底にいつもありました。せめて、私の短歌が、
心に悲しみを秘めている人々の慰めになれば、と願っております。
「花と悲しみ」より 作品抜粋
スミレにはスミレの美学あるならば誰も私を規定できない
悲しいと鉢花を買う癖がある「一緒に生きよう」と声をかけつつ
花びらを浮かべしバスに痩せてゆく我が身沈めてオフェーリアとなる
床の中「今夜死ぬかもしれない」と思える晩は虫の音(ね)やさし
美しき三十路(みそじ) 鏡をのぞきたる我が瞳(め)に映る魂の軌跡(あと)
「秋の静寂に」より 作品抜粋
序にかえて
悲しみに詠める心を捧げます汝(なれ)のいだきし哀しみがため
――もし、あなたが私と同じような痛みを心のどこかに宿しておられるなら――
われはなぜ生きるやそれを知らぬまま今はひとえに死を想ひたり
使い捨てカイロの冷えてゆくさまに愛惜おぼゆ捨てきれぬなり
吾がために祈りてくれる人ありて素直になれぬこころわびしき
われ病みて見つめし母のもの云はぬ瞳の奥にせつなさを聴く
今日われはまだ生きている、掌に冬の朝日のかがやいており
感情もこころも永遠(とわ)に死にゆけり朱き血こぼる白き手首に
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