星少女
日友靖子
いったい  あれは

なんだったのでしょう



招くようにゆれる

あおいススキの葉むらの後ろ

なにかが  ひそむ気配です

「ヤッホー」  小石をなげてみる

と  風をかすめて



ふわり  少女が立っていました

足跡  に  足跡  を

かさねて近づく少女

一つがいの鳥のような

桃花鳥色(ときいろ)の両手に  あやとりの紐(ひも)



指を  つよくしなわせ

少女は紐をあやつります

くねった紐が宙にえがく

ボウシ  ホウキ  カイダン  ハシゴ

そして  星

いびつにひしゃげた六角の星



少女は顔をしかめます

「あたしの星をつくりたいの

在(あ)った  と思えるしるしに正六角形(ヘキサグラム)の星を

でもいつも  こんなふうになっちゃって……」

空の奥で風が鳴りました

形のない風に少女の声はさらわれ

はげしく  はげしく

はげしい希(のぞ)みにもだえるように

ススキの葉むらは風にもつれました



いったい  あれは

なんだったのでしょう



ススキは  なにを

隠していたのでしょう

風が気まぐれに

なにかをしかけたのでしょうか



あしたも少女は現れて

あたらしく  けなげに

じぶんの星をつくるでしょうか?

――どうしてもこなければなりません

わたしの野原へ

正六角形を見とどけるまで

足跡に  足跡を  かさねて


〔注〕  正六角形(ヘキサグラム)=完全を象徴

ジュニア・ポエム双書46  『猫曜日だから』
教育出版センター  より


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