■Mainichi Daily Mail Education   毎日教育メール(コピー)

  2004-11-05 No.705


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 <視点>国旗・国歌への天皇発言 矢倉久泰
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 10月28日に赤坂御苑で開かれた秋の園遊会で、天皇陛下は国旗掲揚・国歌斉唱の強制は好ましくない旨の発言をされた。天皇には何ら政治的・行政的権限はないが、学校現場に国旗掲揚・国歌斉唱を強制してきた東京都などへの歯止めになるかもしれない。

 これは、園遊会の出席した棋士で東京都教育委員の米長邦雄さん(61)に対して天皇陛下が述べられたもので、「教育委員のお仕事、ご苦労さま」と天皇陛下がねぎらいの言葉をかけられた際、米長さんは直立不動の姿勢で「はい、日本中の学校で国旗を掲げ、国歌を斉唱させることが私の仕事でございます」と述べたところ、天皇陛下は「やはり、強制になるということではないことを望みます」と、穏やかに発言された。

 米長さんは価値観を共にする友人の石原慎太郎知事に頼まれて1999年から東京都の教育委員を務めている。都教委が昨年来、国旗・国歌の卒業式などの式典での扱いを細かく定め、それに従わなかった教員250人を職務命令違反として処分したが、米長さんは教育委員としてそれを推進してきた。

 これは私の推測だが、米長さんは天皇陛下からお褒めの言葉を期待して発言したのかもしれない。しかし、そうでななかった。米長さんはあわてたように「もう、もちろんそう、本当に素晴らしいお言葉をいただき、ありがとうございました」と述べた。これも私の推測だが、天皇陛下は「君が代」をご自分にかかわる歌と認識されており、その歌が強制されて教育現場に混乱をもたらしていることに心を痛めておられたのではないか。

 国旗国歌法が99年に制定されるとき、当時の小渕首相は衆議院内閣委員会で「我が国の国民として、児童・生徒に国旗・国歌の意義を理解させ、それらを尊重する態度を育てることは極めて需要だ。しかし児童・生徒の内心にまで立ち至って強制しようという趣旨のものではない」と答弁している。憲法に保障された思想・良心の自由を意識しての発言と思われる。天皇発言について宮内庁次長も「首相答弁に沿ったもの」と説明した。

 国民への国旗掲揚・国歌斉唱の義務付けは、憲法にも教育基本法にも国旗国歌法にも定めがない。しかし学習指導要領には「国旗掲揚・国歌斉唱を指導するものとする」と規定され、文科省は「指導の徹底」を学校現場に通知しているので、これを受けて都教委は教員たちに処分をちらつかせて指導を事実上、強制しているわけだ。

 学習指導要領は当然、憲法・教育基本法の枠内で作成されるものでなければならないが、この辺の整合性はどうなっているのだろうか。「指導の徹底」は児童・生徒に国旗掲揚・国歌斉唱を強制することを意図しているから、これは憲法にも首相答弁にも反するということになるのではないか。(教育ジャーナリスト)