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“心の性”尊重して 患者が手記−−埼玉医大で初の公認性転換手術

●1998年10月16日東京夕刊

 埼玉医大総合医療センターで性転換手術を受けた患者は16日、支援グループを通じ、現在の心境をつづった手記を報道各社に寄せた。(カッコ内は編注)

   ×  ×  ×

 埼玉医科大学の原科先生の初診を受け、「性転換手術を受けたい」とお願いしたのは、1992年7月20日のことです。あれから6年3カ月。長いようで、仕事や通院に追われ、あっという間でした。原科先生をはじめ、ジェンダークリニック(関係分野の専門家が構成する性同一性障害治療のための医療チーム)の先生方を信じ、日本でも手術を受けられる日が必ず来るとがんばってきました。感無量というのがまずは正直な感想です。

 これまで親身になって支えて下さった主治医の先生方、埼玉医大倫理委員会や日本精神神経学会など関係者の方々、支援してくれた仲間、家族に深く感謝しています。

 私は小さいころから、自分の体に強い違和感を感じてきましたが、今、やっと本来の自分の体を取り戻すことができるのだという実感をかみしめています。

 しかし、沖縄から北海道まで全国に私と同じ悩みを抱える当事者は数多くおり、その数は数千人と言われています。私たちが将来に希望をもって生きていけるようになるには、さまざまな問題の一刻も早い解決が必要です。

 医療面でいうと、専門医はごくわずかで、国内にたった一つのジェンダークリニックしかありません。医療費は健康保険の対象外です。そのため多くの当事者が医療の場で偏見や差別にさらされたり、不十分な医療しか受けられずにいます。また医療費や通院費の負担がその肩に重くのしかかっています。私たちも不安なく医療を受けられるよう、専門医の育成や全国数カ所への拠点病院の設置、健康保険の対象疾患への認定など、医療環境の改善を強くお願いいたします。

 法律面ではトランスセクシャル(性転換希望者)にとって、戸籍の性別の変更が認められないことが就職や結婚など、生活上の大きな壁になっています。不当解雇や昇進差別にあう人もいます。これらのことは日本国憲法が定める「幸福追求権」(13条)をはじめとする基本的人権を脅かすものです。性転換法の制定の検討も含めて、法的な整備が急務です。

 教育面では無理解や偏見から性的少数者である子供たちが不登校になったり、いじめなどに苦しんでいます。トランスセクシャルやトランスジェンダー(自分の性に違和感はあるが、性転換は希望しない人)、トランスヴェスタイト(異性装者)、インターセックス(半陰陽)、同性愛など多様な性の人々がいることを授業で取り上げ、正しい知識を普及してほしいと思います。「心の性」を「体の性」へ合わせることはできません。性同一性障害の子供たちに男らしさ・女らしさを強いることは、精神的な虐待に等しいことです。どうか「心の性」を尊重してください。

 そして最も望むことは、差異のあるおのおのが互いに個性や人格を認め合い、生かすことができる、多様性の共存が可能な社会が実現することです。これらのために私たちも努力しますが、多くの方々の協力を願ってやみません。

 最後に報道関係者の方々も、長い間あたたかく見守ってくださり、ありがとうございました。今後も社会的な理解が深まるようご協力をお願いいたします。

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