[性を越えて−自分らしく生きる]
(上)連帯
彼(36)はスカートを選んで着たことがなかった。制服のスカートも、下にジャージーのズボンを履いて学校に通った。
戸籍上は女性。でも、自分を男としてしか考えられなかった。好きになる相手も女性……。
「自分は変なのか」。だれにも相談できず、ずっと悩んできた思いから、突然解放された。
4年前、埼玉医大が全国初の性別適合手術を実施した。そのニュースを見て、「性同一性障害」という言葉を知った。
「これだ」。やっと答えを見つけた。
昨年4月、岡山市で性同一性障害などの自助グループを設立した。「悩んでいるのはあなただけじゃない。自分らしく生きていける場所を見つけてほしい」との思いからだ。会員は約30人に上る。
短く刈った髪。「男として生きたい」と、外見通り男性として働き、一緒に住む女性がいる。戸籍の性別変更をして結婚したいと願う。
彼の自助グループなどによる実行委が3月下旬、岡山大医学部で講演会を開いた。講師は、性同一性障害者や家族などが寄稿する冊子「FTM日本」を主宰する虎井まさ衛さん。20歳代に女性から男性への性別適合手術を受け、セクシュアル・マイノリティー(性的少数者)の人たちの信頼厚い存在だ。
「術後は人の目が気にならなくなり、精神的に安定して幸せ」。虎井さんはそう語る一方で、戸籍の性別変更が認められないことが結婚や就職の障壁になる問題を指摘。「外見と違う性別を記した健康保険証を見せるのが嫌で医者にかかりづらい」と、当たり前の生活ができない不便さを話した。
会場には、岡山、広島だけでなく近畿からも同じ悩みを持つ人たちや支援者ら約200人が参加。「顔を出すことでの弊害は」「家族のサポート機関はあるか」など質問が続いた。
自分の思いを語る人たちも相次いだ。
「手術をしたい人は、できるまで自分の性がないことをわかって」「日本で手術が進まないのは人権侵害」−−。
◇ ◇
性同一性障害など「性」の悩みを持つセクシュアル・マイノリティー。憲法が掲げる基本的人権にもかかわる少数者の活動が、岡山を核に西日本で広がろうとしている。きっかけは、岡山大医学部付属病院が去年踏み切った性別適合(性転換)手術。彼らの活動や連帯、医療の今を追った。(小林 裕子)
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