[性を越えて−自分らしく生きる]
(下)活動
「番組を聴いて、自分はこれでもいいんだと気づき、死ぬのを思いとどまりました」
同性愛に悩む男子高校生からの手紙だ。読んでいた青樹恭さん(42)の目から涙がこぼれた。岡山市のFM局で、セクシュアリティー(性的指向など)とジェンダー(社会的性)について語る番組のパーソナリティーを務める。
青樹さんはレズビアンだ。カミングアウトして以来、高校や大学、公民館の講座でも語る。「何げない一言で傷ついている人が身近にいるかもしれない。一人ひとりは違うし、いろんな価値観がある。それに気づいて」
番組は毎週土曜日午後11時からの30分間。青樹さんはある日、新しい高校教科書で、公民にジェンダーが登場したり、保健体育で感染症予防として避妊具の使い方を図解したりしていることを取り上げた。「一歩前進と思うけど、同性愛カップルなど偏見を持たずに、現場の先生もしっかり勉強してほしい」と呼びかけた。
リスナーに向け、話題は続く。ピルは女性が主体的に避妊をコントロールできる半面、感染症の予防に役立たない危険性があること。性同一性障害と診断され、それを打ち明けた女性競艇選手が、選手登録を男性に改め、名前変更も認められたこと−−。
「岡山という地方都市でも、セクシュアルマイノリティーとして動いている人間がいることを伝えたい」。その思いで続けた番組は、今年で6年目。局で最長寿番組だ。
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自分のセクシュアリティーについて、だれの非難も受けず、安心して話せる場所。吉田重幸さん(37)は94年、そんな思いからサークル「P3」を発足させた。セクシュアル・マイノリティーの会の老舗(しにせ)的な存在として、資金面などの大変さを乗り越えて続けてきた。
当初の参加者はゲイの男性ばかり。今は同性愛、異性愛にかかわらず、活動に賛同する人たちが月例会を開き、情報交換やイベントをする。
ここ数年、吉田さんのもとに性同一性障害者からの問い合わせが増えた。「手術を受けられる病院を紹介して」「性同一性障害のサークルを教えてほしい」−−。
吉田さんは言う。「人間性を否定されることを恐れず、性について話せる場が少ない現状では、このサークルは大事だと思う」
彼らが発信する情報が、少数者への理解の輪を広げていく。少しずつ、着実に。