10代の決心、見守る大人

つないだ手は――オランダの女性たち:4



 生後8カ月のディランは、金のピアスを着けている。母のエミリー(17)の左足には、息子の名を「単倫」と当て字にしたタトゥーがある。

 「私には17歳のエネルギーがある。若すぎるからというだけで、母親に向かないとはいえないんじゃない」

 ロッテルダムにほど近いフラールディンエンの労働者住宅。ロックが流れる部屋で、エミリーは慣れた手つきで子どもをあやす。

 夫のデイブ(19)と、子育ての真っ最中だ。親の手は借りていない。育児書と弟たちを世話した自分の経験を頼りに育て方を決める。

 15歳の時、近所のスポーツジムで彼に一目ぼれした。初めての恋人だった。

 16歳で予期せぬ妊娠。ピルを正しく使えていなかったのが原因で、産むかどうか気持ちは揺れた。オランダは、10代の出産が1000人に4人と欧州の中で極めて少ない。

 友人は「やめたほうがいい」という。母は驚いて泣くばかりだった。重い気持ちでデイブの両親に相談に行くと、「2人で決めることなら、何であれ賛成する」といわれた。彼は一瞬もひるむことなく、「育てたい」。

 最後に、別に暮らす父に会いに行った。生活態度にだれより厳しく、煙たい存在だったが、「すてきじゃないか」と笑顔で励まされた。

 産着の買い物には、親友の両親が付き合ってくれるなど周囲の理解もあった。

 いま夫は求職中で、夜間のアルバイトと失業保険でやりくりしている。自分も18歳から、自動車の運転指導員になる学校へ通うつもりだ。保育所の待機児リストにも登録を済ませてきた。

 出産の瞬間が全身によみがえることがある。難産で余裕もなかったのに、「すばらしかった」と覚えている。

 マライエ(18)が、ロッテルダムのダニエル(26)の部屋に引っ越したのは半年前だ。彼は大工としての独立を控え、自分は新しい学校への入学を準備していた。「大事な時期だけど大丈夫だよね」。繰り返し確認し、両親に同せいを切り出した。

 1年半前、点数主義になじめず有名進学校を辞めた。知人に紹介された老人施設で働き始めた。体をふいたり、食事の介助をしたり。けれど、相手の話を聞いて力になりたくても、資格のない立場には限界があった。心理学の専門家を目指し、勉強を始める決心ができた。

 そのころ、遊び仲間だった彼とつきあい始めた。

 母(43)は最初、「先に一人暮らしを経験してみたら」といった。意思の強さを確かめていたのだと思う。何度も説明すると、「やってごらん」と送り出してくれた。

 奨学金とヘルパーのアルバイトで月5万円。親から援助を2万円受けている。家賃は3万円かかる。物価は日本のほぼ半分。彼の収入を加えると十分やっていける。

 マライエは2人で夢を話すのが好きだ。「待つための理由を探すより、すでに始まっている彼との人生を、先に進めたいの」(敬称略)

 =おわり

(11/08)