読者の反響220通
つないだ手は――夫婦になって

 長期連載「つないだ手は」の最終シリーズ「夫婦になって」に、約220通の反響が寄せられた。不妊治療、離婚、再婚を体験した3組の夫婦双方の話に、「自分たちのことを考えた」との声が多かった。その中から、人生の折り返し点を迎え、「夫婦」を問い直した女性2人を訪ねた。投稿の一部とともに紹介する。

 九州に住む主婦(53)は昨年、不妊治療を考えた。2年前に職場の同僚と再婚。「夫のDNAを残してあげられないか」と悩んでのことだった。

 12年前、前の夫を病気で亡くした。19歳を頭に、3人の子を育てるため働いた会社で、今の夫(56)と出会った。彼は独身で、高齢の親と同居し、家事や介護をこなしていた。4年前の夏、その彼が心筋梗塞(こうそく)で倒れて入院してしまった。

 親族でない自分は、集中治療室に入れてもらえなかった。好きな人の看病を堂々とできない。そんな気持ちを察したのか、末娘が言ってくれた。「私の犠牲にお母さんがなるのは嫌」

 その言葉にも押され、自分から「結婚しよう」とプロポーズした。母や親類は反対したが、「悔いのない人生を過ごそう」と思った。しばらくして結婚した。

 昨夏、米国での体外受精で出産した60歳の日本人女性のニュースを知った。「子どもを産みたい」との思いが募る。不妊治療を考え、2人で病院を決めた。でも結局、行かなかった。

 「子どもが欲しいのは私たちのエゴではないか」

 「医療技術を使ってどこまでやっていいのか」

 何日も深夜まで話し合った。そして泣きながら出した結論。「今を楽しんでいこう」と決めた。

 夫は元気になり、今年に入って週1回、一緒にゴルフ教室に通う。共通の趣味を持とうと、夫の誘いで始めた。前の夫は深夜まで残業し、休日も接待ゴルフに行く仕事人間だった。夫婦の会話も少なかった。

 「今はどんなことも納得するまで話し、お互いを理解するようにしています。今までできなかったこと、やり残したことを2人でやる。青春に逆戻りしようと言い合って」

 関東地方の自営業者(52)の妻(47)は最近、離婚を思いとどまった。会話のない約1年半の家庭内別居を、夫の一言が変えた。

 一昨年の暮れ、会社の経理でミスをした。夫に手助けを求めると「頼むなら、もっと下手に出ろ」と怒鳴られた。仕事も家事もかんぺきを求め、できないと不機嫌になる。もう何を言っても無駄とあきらめて、険悪な雰囲気をとりなすこともやめた。用事は伝言板に書き、寝室も別にした。

 お互い離婚を考え始めた今年3月、仕事が一段落した時だった。

 「離婚どうする」。夫が話しかけてきた。「悪いところは直すからやり直せないか」。結婚21年で初めて聞いた反省の言葉だった。つらい時、自分には支えてくれる娘がいたが「おれには誰もいなかった」と夫はこぼした。なぜか涙が出た。

 ここ数年、借金のために商売をしているような状態だ。それでも夫は営業に回る。「50代の男って、強がって弱さを見せないでしょ。苦しさなんて想像できなかった」

 夫が急にやさしくなるとも思えない。ただ、「互いに歩み寄り、変化をみていきたい」。そんな心境になれた。

 ○歩み寄り、言葉尽くして

 不妊治療を経て、2人で生きる道を選んだ夫婦の話には、同じ体験者からの反響が多かった。

 ■治療の末に

 結婚4年になる東京都の女性団体職員(38)は人工授精、体外受精を重ね、ストレスの限界に達した。「そんな時、子どもをもつことの意味や、できなかった時の生活設計をとことん話し合いました。結論がほしいのではなく、気持ちが落ち着くのです」

 その後、治療を休んだ直後に妊娠。7月に出産予定という。「不妊イコール不幸と見られる世の中で、それをどう乗り越えるか。夫婦なりの答えを出せた時が、治療のゴールになるのではないかと思います」

 神奈川県の女性会社員(36)は、不妊治療で双子に恵まれたが、2年後に離婚した。「お互いの心を確かめ合う夫婦にとって大切なことが、子どもを作るための行為に変わり、苦痛に感じ始めた」のが原因だったと振り返る。

 「犠牲になった子どもを思うと心苦しいのですが、子どもが人生のすべてではないことを知ってほしい。治療よりもお互いの思いやりを大切にしてほしい」

 ■自分磨いて

 投稿は男性からも。

 「離婚の苦しみは経験したものしかわからない」とメールを寄せた埼玉県の獣医師(41)。「嫌ならいつでも別れられる緊張感のある方がお互いやさしくなれる。結婚したから自分のものという甘えが、自分を磨くことを忘れさせるのかもしれない」と、自らの体験から考えをつづる。

 外国人と再婚した京都府の女性パート社員(31)は、再婚夫婦の話に共感した。

 「うちでも『パパのお陰でこんなに楽しい生活ができるね』って子どもによく言います。幸せでなかった結婚生活を知っているからこそ、相手の良さを感じ、感謝の気持ちがもてる」。その大切さを再認識したという。

(05/21